トランシーバーの基本的な使い方

トランシーバーの基本的な使い方

トランシーバーは、一見すると携帯電話で通話をするのと似ているように見えますが、操作方法も通信の仕組みも大きく異なります。基本的な使い方をよく理解しないまま業務で使用してしまうと、正常に通信できず業務に支障が出てしまうこともあるかもしれません。

細かな使い方に関しては、機種によって異なる面もありますが、基本的な使い方を覚えておくことが大切です。

本記事では、トランシーバーの基本的な使い方について解説していきます。

トランシーバーを使う前に必要な準備

トランシーバーを使う際には、事前に次のような準備をしておく必要があります。

電源と音量の設定

最初に電源をオンにしておきましょう。機種によってやや異なる場合もありますが、音量のツマミが電源ボタンを兼ねていることが多いです。音量が小さくなる方向に最大まで回してカチッとなると電源がオフになります。オンにする場合には、音量が大きくなる方向に回すだけです。

また、電源がオンになっていても、小さすぎて聞こえづらいこともあるため、ある程度大きくしておきましょう。

チャンネル合わせ

トランシーバーでは、チャンネルごとに周波数が割り当てられています。同じチャンネルに合わせられているトランシーバー同士が、同じ周波数を使って通信する仕組みです。チャンネルが異なると、使用する周波数が異なるため、電波の届く範囲内にある機種同士でも通信できません。そのため、通信をする相手と同じチャンネルに合わせておきましょう。

また、使用できる周波数はトランシーバーの種類によって異なります。

トランシーバーで話をするときの基本的な手順

通信の相手とチャンネルを合わせたら、通話ができるようになります。ただし、携帯電話で通話するときのようにはいきません。具体的には次のようにして通話を行います。

自分が話すとき

自分が話すときには、送信ボタンを押しながら話します。ここで注意が必要なのは、送信ボタンをただ押すのではなく、話している間はずっと押しっぱなしにしておくということです。トランシーバーは、送信ボタンを押しっぱなしにしている間だけ、送信できる状態になります。送信ボタンから指を離すと、その瞬間から送信できない状態に変わる仕組みです。そのため、話をする前に送信ボタンを押して話した場合には、相手には何も聞こえません。

話の途中で送信ボタンを離した場合には、相手のトランシーバーでは、話が途中で途切れてしまいます。

また、通話するときにはいきなり用件を話し始めるのではなく、最初に「こちら○○です」のように自分の名前を名乗りましょう。その後で「△△さん」のように相手の名前を言ってから用件を話し、最後に「どうぞ」と言って送信ボタンから指を離します。

相手が話すとき

相手が話すときには、こちらは特に何も操作をする必要はありません。トランシーバーの電源がオンになっていれば、電波が受信されて相手の声が聞こえてきます。相手が「こちら○○です」「△△さん」と言ってきたら、これから用件を伝えられるため、耳を傾けるようにしましょう。

話の途中で質問や確認したいことなどがある場合でも、相手が話し終えるまでそのまま聞き続けます。もし、相手が話している最中に発信ボタンを押してしまうと、相手の電波を受信できず、声が聞こえなくなってしまうため注意しましょう。大事な内容を聞き逃してしまう可能性があります。

基本的に発信と受信を同時にすることはできない

トランシーバーは、基本的に発信と受信を同時に行うことはできません。こちらが発信しているときには、相手の声を聞くことはできず一方的に話すことになります。相手が話しているときもその逆で、こちらから話すことはできず、一方的に聞くだけです。

そのため、質問や確認事項などがあるときには、相手が話し終えて「どうぞ」と言われてから発信ボタンを押して質問や確認をします。この点が携帯電話で通話するときとの大きな違いです。

ただし、機種によっては発信と受信の両方を同時に行えるものもあります。

複数人に同時発信できる

トランシーバーでは、発信相手は1人だけとは限りません。チャンネルを合わせていれば複数の相手に同時に発信できます。そのため、チームで仕事をするときなどには携帯電話より便利です。1回発信するだけで、他のメンバー全員に情報を同時に共有できます。

また、基本的に相手を指定して発信することはできません。発信すれば、チャンネルを合わせていて電波の届くところにいる相手全員に発信される仕様です。

ただし、機種によっては通信相手を指定できるものもあります。

トランシーバーで行える通話の方式

トランシーバーで行える通話は、次の3種類の方式に大別できます。

交互通話

交互通話は、送信ボタンを押しているときだけこちらの声を相手に送信できる通話方式です。送信ボタンから指を離すと、送信を中断します。交互通話の方式においては、発信と受信を同時に行うことはできません。ボタンを押していないときには受信する状態になっています。

また交互通話は、トランシーバーではもっとも基本的な通信方式であり、多くの機種に採用されているものです。前項で説明している、話すときの基本的な手順も、交互通話を前提としています。

同時通話

同時通話は、1人の相手に対して発信と受信を同時に行える通話方式です。ボタンを押したり離したりして、送信と受信を切り替える必要はありません。携帯電話で通話をするときと近い感覚で通話できます。相手が話している内容で分からないことがあれば、話し終わるのを待たずすぐに確認や質問ができます。逆にこちらが話している途中で、相手から確認や質問をされることもあるでしょう。

また、ボタンを押したり離したりする必要がないため、両手が塞がっている状態でも使用できます。

一斉同時通話

一斉同時通話は、通話の相手が複数で、なおかつ発信と受信の両方を同時に行える通話方式です。自分が話した内容は、チャンネルを合わせている相手全員のトランシーバーに聞こえます。他のメンバーが話した場合も同様に、自分も含めて全員に聞こえる仕組みです。

リアルタイムでメンバー全員に情報を共有したい用途で使うときに便利でしょう。

送信機2台と受信機1台でミキシング通信する方法

送信機2台と受信機1台でミキシング通信する方法

送信機2台と受信機1台を使用することで、ミキシング通信という特殊な通信が行えます。

複数の入力音声を同時に送信できるというものです。主に通訳が必要なときに使用します。話者が外国語で話している音声と、それを通訳している日本語の音声を同時に聞くことができます。

話者が使用するトランシーバー

まず、1台目の送信機のマイク・外部入力スイッチで「マイク」に設定しましょう。それからチャンネルを合わせて、ミキシング接続コードを差し込みます。ミキシング接続コードの反対側は二手に分かれていますが、そのうち片方にモノラルマイクイヤホンを接続しましょう。もう片方には、モノラルケーブルを接続します。

1台目の受信機の方は1台目の送信機とは異なるチャンネルに合わせて、モノラル接続コードの反対側を差し込み、1台目の送信機とつなげましょう。

通訳の人が使用するトランシーバー

通訳の人は2台目の送信機を使用します。設定は1台目の受信機と同じチャンネルを合わせて、モノラルイヤホンマイクを付けるだけです。

聴者が使用するトランシーバー

聴者が使用する受信機は、1台目の送信機と同じチャンネルに設定してイヤホンを接続しましょう。そうすると、外国語の音声とそれを通訳した音声の両方が聞こえます。

送信機1台と受信機2台でミキシングブースを作る方法

ミキシングブースはシンポジウムなどで、質疑応答をするときなどに使用します。送信機1台と受信機2台で行う特殊な通信方法です。

話者が使用するトランシーバー

話者が2人いるため、それぞれ別々の送信機を使用します。いずれもマイクを取り付けますが、異なるチャンネルに設定しましょう。

ミキシングブースで送信に使用するトランシーバー

ミキシングブースで送信に使用するトランシーバーは、2人の話者のうちいずれとも異なるチャンネルを設定しましょう。それから枝分かれしているミキシングコードを使用して、モノラルケーブルを2本接続します。この2本は次で説明する受信機と接続するために使用するものです。

ミキシングブースで受信に使用するトランシーバー

2台の受信機で、それぞれ話者が使用する送信用のトランシーバーと同じチャンネルに設定します。それからミキシングブースとモノラルコードで接続しましょう。

聴者が使用するトランシーバー

聴者が使用するトランシーバーは、ミキシングブースの送信機と同じチャンネルに合わせましょう。そしてイヤホンを接続すると、ミキシングブースを介して2人の話者の声が聞こえます。

正常に通信できない場合の原因と対処法/h2>

距離や遮蔽物の影響

トランシーバーは種類や機種により、電波の届く範囲に差があります。また、距離的に問題ない場合でも、遮蔽物の影響で電波が届きにくくなることも多いです。

通信できなかったり不安定になったりする場合には、長めの距離に対応している機種を使用すると解決できる場合があります。

混信している

近くでたまたま同じチャンネルを使用している人がいた場合には、関係ない音声が入る可能性があります。この場合には、混信している状態です。

混信は他のチャンネルを使用することで回避できます。また、使用する前に口頭で確認してみるのもいいでしょう。「このチャンネルを現在使っている人はいますか?」と発信してみれば確認できます。もし、先に使っている人がいれば応答があるはずです。

アクセサリー類に問題がある

トランシーバーに接続するイヤホンやマイクなどが故障しているケースもあります。特にケーブルの断線などはよくある故障の例の1つです。また、故障はしておらず、接続不良の場合もあります。

まずは、接続がきちんとなされているかどうか確認してみましょう。それでもダメなら、断線の可能性が高いため、新しいイヤホンやマイクに交換する必要があります。

まとめ

トランシーバーを使用する際には、チャンネルを合わせる必要があります。基本的に同時通話はできず、話すときには送信ボタンを押していなければなりません。自分の名前を名乗ってから、相手に呼びかけて用件を話し、最後に「どうぞ」と言いましょう。

また、複数台のトランシーバーを組み合わせて通訳や質疑応答などが行われている場面でも使用できます。基本的な使い方をマスターして上手に使いこなしましょう。

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